その香り、誰かを苦しめていませんか? 合成香料が化学物質過敏症や環境汚染を引き起こす原因に
みなさんは「香害(こうがい)」という言葉をご存じですか?
香水・消臭剤・洗剤・柔軟剤・シャンプーなど、私たちの周りは様々な香りで溢れています。
特に梅雨のこの時期には部屋干しや生乾きの臭いが気になり、香りの強い洗剤や柔軟剤を使うという方も多いのではないでしょうか。
しかし、近年、その香りに含まれる化学物質の影響に苦しむ人が増えています。
この記事では、香りがもたらす健康被害や環境汚染問題についてまとめました。さらに、合成香料に頼らなくても快適に暮らすアイデアも合わせてご紹介します。
Contents
2人に1人が香害による健康被害の経験者
香害は、香水・合成洗剤・柔軟剤などに含まれる合成香料によって、体調不良やアレルギー症状などの健康被害を引き起こすことを指します。香害による健康被害は人によって様々ですが、頭痛や吐き気、めまいなどの症状が多いとされています。
シャボン玉石けん株式会社の調査では、5割を超える人が「人工的な香りをかいで、頭痛・めまい・吐き気などの体調不良を起こしたことがある」と答えており、最も身近な公害と言えます。
さらに、日常的に合成香料に含まれる化学物質を体内に取り込むことによって、化学物質過敏症を発症する人が急増しています。
ある日突然、発症する化学物質過敏症の恐ろしさ
化学物質過敏症は、大量の化学物質を、あるいは、微量な化学物質を繰り返し体内に取り込むことで発症すると言われています。
化学物質への感受性は個人差が大きく、同じ環境にいても発症する人としない人がいますが、いつ誰が発症してもおかしくない病気です。その人の許容量をオーバーしてしまうと、ある日突然、コップの水が溢れるように発症してしまうのです。
厚労省の調査(2012年)では、成人で化学物質に高感受性を示す人は、4.4%(約450万人)、準・高感受性の人は7.7%(約800万人)と報告されており、未成年者も含めるとその患者数はさらに増える見込みです。
化学物質過敏症の主な症状
化学物質過敏症は、次のような様々な症状を引き起こします。
- 目のかゆみ・かすみ
- 鼻水・鼻詰まり
- 音が聞こえにくい・音に敏感になる
- 口や喉の乾き・食べ物の味が分かりにくい
- 下痢・吐き気
- せき・くしゃみ など
出典:シャボン玉石けん株式会社
出典:特定非営利活動法人 化学物質過敏症支援センター
香害が原因で職場や学校に行けなくなる人も
私たちの身近にある香害。しかし、香りは目に見えず、香害によって引きおこされる化学物質過敏症への認知度はまだまだ低いのが現状です。そのため、香りによる体調不良を訴えたとしても「気にしすぎ」「神経質だ」と周りからの理解を得られず、職場を退職せざるを得なくなる人や、学校に通えなくなる子どももいます。
2018年6月、シャボン玉石けん株式会社による広告が話題になりました。香害に苦しむ小学生が、社長へ送った手紙を広告として掲載したのです。
また、東京・生活者ネットワークが行った「学校保健における香害対策についてのアンケート調査」では、以下のような事例が報告されています。(一部抜粋)
- 給食着ではないが、教室内での香料と思われる臭いで気分が悪いと訴えた児童がいた
- 給食当番のエプロンや帽子に残っている洗剤の臭いがきつい。
- 保護者会で隣の席のお母さんの香料が強くて気分不良となった保護者が保健室に来室してしばらく休むという事例があった。
- 体育の更衣の時、着香が気になる。体臭(お香を含む)が気になる児童が3名いるとのことで訴えがあり、座席と給食着の配慮をした。
- 制汗剤等の香料に過敏な生徒があり、保健体育の更衣時等の使用自粛と喚起を呼び掛けている。
日本消費者連盟が2017年に行った「香害110番」の相談窓口には、2日間で213件もの相談が寄せられ、一番多かった相談内容は、柔軟剤の香りについての相談でした。
出典:東京・生活者ネットワーク 学校保健における「香害」対策についてのアンケート調査 報告
香りカプセルは香害だけでなく環境汚染の原因に
合成香料によって体調不良が引き起こされるだけでなく、近年流行している「香りが長続きする」「触れると香る」というキャッチコピー製品に使用されている香りカプセルによる環境汚染も問題視されています。
香りカプセルは、目には見えないマイクロカプセルに香りを閉じ込め、摩擦によってカプセルが破壊されることで香料が放出される仕組みです。
このマイクロカプセルは、直径が数μmから数千μm(1μm=1000分の1mm)で、破裂されることでさらに小さく、PM2.5(注1)程のサイズとなり空気中を漂うことになります。
- 注1:PM2.5とは
- 粒子が非常に小さいため肺の奥深くにまで入り込みやすく、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系疾患や循環器系疾患などのリスクを上昇させると考えられています。
環境中へ放出されたマイクロカプセルは、私たちの体内に入り人体へ影響を及ぼすだけでなく、下水を通り抜け、やがて海へと流入することになります。世界の海には、年間800万トンものプラスチックごみが流入していると推定され、様々な生物がプラスチックを摂食していると言われており、世界的に問題となっています。
それだけではなく、マイクロカプセルの原料として使用されているイソシアネートという化学物質には毒性があり、呼吸器への影響、発がん性などが指摘されています。
出典:【緊急提言】G20に向け 家庭用品へのマイクロカプセルの使用禁止を求める緊急提言(2019年5月10日)
出典:環境に広がるイソシアネートの有害性
香りマナーを身に付け、誰もが快適に暮らせる社会へ
香りにはリラックス効果や、気分をリフレッシュしてくれる効果も期待できます。その一方で、化学物質を含んだ人工的な香りは、知らず知らずのうちに誰かを傷つけているかもしれません。
特に、洗剤や柔軟剤、シャンプーのように日常的に使用を続け、同じ香りを嗅ぎ続けることで嗅覚が麻痺し、自分ではニオイが分からなくなる場合があります。職場や学校など公共の場で使用するものには、無香料の製品を使うなど配慮しましょう。
合成香料を使用していない製品でも、しっかり汚れを落としたり、ニオイを取ってくれる商品が販売されています。ヴィーガン子育て編集部でも愛用者の多い代表的な商品をご紹介しますので、汚れやニオイ残りが気になる方は、ぜひお試しください。
国産竹からうまれたやさしい洗剤『バンブークリア』
『バンブークリア』は「竹炭」「竹炭灰」「湧水」だけのシンプルな原材料でつくられた天然成分100%の無添加洗濯用洗剤です。原材料の元になる竹は、主に山口県内(周南市、防府市)にある放置竹林の環境整備を目的として計画的に伐採されたものを使用しています。
ヴィーガン子育てセレクトショップにて、お買い求めいただけます。
柔軟剤の代わりにクエン酸
約6kgの衣類に対してクエン酸を小さじ約1杯入れるだけで、雑菌による嫌なニオイを防いだり、石けんカスによる黄ばみを抑える効果が期待できます。
香害について親子で学べる本
合成化学物質は認定されたもので約1億種類。実際はその10倍ともいわれています。微量な多数の化学物質で、多岐な症状が花粉症のように広がっています。
アマゾン商品紹介
これを機会に普段の「香り」を改めて意識してみませんか?
ヴィーガン子育て編集部