【給食を知ろう】食物アレルギーによる事故も増加~今後の解決方法は?~
このシリーズでは、学校給食の現状を知ることで、「単に出されたものを食べる」のではなく、子どもたちにとって必要なものは何か、地域社会、地球環境もひっくるめて、何を意識していけばよいか一人ひとりが考え、給食の現状を改善していくことに繋げていきたいと考えています。今回は、給食事故に焦点を当ててみたいと思います。
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Contents
食物アレルギーによる事故、中には死亡事故も。
これまでも給食に関しては様々な事故が起きてきました。中には死亡に繋がるケースもあります。
近年、食物アレルギーを持つ児童は増加しており、それに伴い事故も急増しています。独立行政法人日本スポーツ振興センターによると学校給食における食物アレルギー事例は平成17年度から平成20年度で804 件発生しています。
死亡事故も発生
平成24年には調布市の小学校で乳製品にアレルギーがある小学5年の女子児童(11)が給食後に体調不良を訴え、食物アレルギーによるアナフィラキシーショックの疑いで亡くなるという痛ましい事故も発生しています。
出典:調布市 調布市富士見台小学校児童死亡事故の検証結果報告書の提出
給食におけるアレルギー対応は4種類
レベル1:詳細な献立表による情報提供
給食の原材料を詳細に記した献立表を事前に配布し、それをもとに保護者や担任などの指示、又は児童生徒自身の判断で、給食から原因食品を除いて食べる対応。単品で提供されるもの(例 果物など)以外、調理されると除くことができないので適応できない。詳細な献立表の作成と配布は学校給食対応の基本であり、レベル2以上の対応でも、あわせて提供すること。
レベル2:弁当持参対応
一部弁当対応
除去又は代替食対応において、当該献立が給食の中心的献立、かつその代替提供が 給食で困難な場合、その献立に対してのみ部分的に弁当を持参する。
完全弁当対応
食物アレルギー対応が困難なため、すべて弁当で持参する。
レベル3:除去食対応
広義の除去食は、原因食物を給食から除いて提供する給食を指し、調理の有無は問わない。
(例)飲用牛乳や単品の果物を提供しない等、本来の除去食は、調理過程で特定の原材料を除いた給食を提供することを指す。(例)かき玉汁に卵を入れない等
レベル4:代替食対応
広義の代替食は、除去した食物に対して何らかの食材を代替して提供する給食を指し、除去した食材や献立の栄養価等の考慮の有無は問わない。本来の代替食は、除去した食材や献立の栄養量を考慮し、それを代替して1食分の完全な給食を提供することを指す。
アレルギー対応は複雑化している!!
現在、アレルギーの原因となる食品は鶏卵、牛乳、小麦の他に、ピーナッツ、果物類、など実に様々で、除去食、代替食と未対応食の取り違え、確認不足などによるヒヤリハットと呼ばれる事例も多く、現場でのマニュアルの徹底や、食物アレルギーへの知識を深めるなど、様々な対応が求められています。
東京都のヒヤリハット事例!
1. 不十分な確認体制
事例:アレルギー対応食の配膳が、栄養士一人の担当になっており、配膳の間違いがあったが、担任が喫食前に誤配膳に気付いたため、事故の発生に至らなかった。
対策:栄養士だけでなく、複数で確認するよう体制を整備した。
2. 担任不在時の体制
事例:担任が不在時の給食で、本来ならクラスでサラダにドレッシングをかける前に、アレルギー対応食用サラダを、食缶から取り分けることになっていたが、補教の教員にその対応が伝わっておらず、全部にドレッシングをかけてしまったが、本人が食べる直前にドレッシングがかかっていることに気付いたため、誤食を防ぐことができた。
出典:東京都教育委員会 学校における食物アレルギー対応 ヒヤリハット・ヒント事例集等
乳製品に対して重度のアレルギーを持つ子がいる教室では、牛乳を飲むときは換気をしながら飲んでいる、というケースもありました。アレルギーをお持ちの子どもの保護者の方は、本当に大丈夫か心配だと思いますが、学校は全体大丈夫とは言えない、ということは意識しておきたいところです。入学の際に、給食の際に注意してほしい点を学校側にしっかりと伝えると同時に、万が一、事故が生じた場合の対応、保険についてなども、事前に確認しておくと良いでしょう。
アレルギー性の食材を除去した給食に統一する可能性は?
上でも述べたように、年々アレルギーの子どもは増えてきています。『食物アレルギー診療ガイドライン2012ダイジェスト版』によると、日本の即時型食物アレルギーは、鶏卵、牛乳、小麦が3大主要原因食品で、全体の約60%を占めています(即時型とは、数分から数時間以内にアレルギー症状が現れるものを指します)。
図:アレルギー原因食品の内訳(対象は食物摂取後60分以内に症状が出現し、かつ医療機関を受診した患者)出典:食物アレルギー診療ガイドライン2012ダイジェスト版
これまでの栄養学に基づくと、卵、牛乳は成長のため必須とされてきましたが、こうした食材でなくとも、栄養は摂れるということは既に研究されています。「アレルギーの子の除去食対応」ではなく、せめて卵、牛乳のアレルギー物質を除去した給食に統一する、ということができれば、保護者も安心なのではないでしょうか。また、除去食として別に労力や費用をかける必要もなくなります。
こうした可能性について、行政側に提案をしていくこともできるのではないかと思います。
次回は、各自治体の取り組みについて見てみたいと思います。
ヴィーガン子育て編集部
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永井佐千子(Sachiko Nagai)
<経歴>
大学卒業後、北京に語学留学
2002年より経営コンサルティング会社で日系企業の中国事業支援に従事
その後、上海の法律事務所で勤務後、2008年に独立
母親が在宅で仕事ができる環境を整えながら企業の事業支援を行う
2015年に一般社団法人世界マザーサロンを設立
一男一女の母
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