大量生産・大量消費にSTOP!食品廃棄(フードロス)を減らすためにできることは?
いつでもどこでも好きなものが買える時代、そしてその消費を支える大量生産。
お店では毎日多くの商品が並べられ、そして捨てられています。
まだ食べられるものが捨てられてしまう『食品ロス問題』は、企業や店といった供給側だけの問題ではありません。家庭でも食べ残しや賞味期限切れなどにより大量の食品が廃棄されているのです。
ヴィーガン子育てプロジェクトでは、地球環境や動物への負荷を減らすため、動物性食品から植物性食品への切り替えを推奨していますが、この「大量生産・大量消費」の在り方を変えない限り、根本的な解決には繋がりません。
日本の食品廃棄の実態を確認し、私たち一人ひとりにできることを一緒に考えてみませんか。
Contents
日本の食品廃棄量は一人あたり年間51kg相当
日本における食品廃棄物2,759万トンのうち、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる『食品ロス(フードロス)』は約643万トンにものぼります。
年間1人当たりに換算した食品ロス量は51kg ≒年間の1人当たりの米の消費量(約54kg)に相当してしまう量です。(農林水産省および環境省「平成28(2016)年度推計」より)
食品ロスの内訳を見てみると、事業者から約352万トン、家庭から291万トンが発生したと推計されています。
引用元: 食品ロスポータルサイト
前年度2015年の同調査では、事業者357万トン、家庭289万トンという結果でした。事業者の廃棄量減少しているのにも関わらず、家庭での廃棄量は増加してしまっているのです。しかも、家庭から出された食品ロス量は2年連続増加が続いています。
家庭で発生する食品ロスの主な原因は次の3つ。
- 食べ残し
- 賞味期限切れによる廃棄(直接廃棄)
- 皮をむきすぎた野菜など(過剰除去)
学校給食で発生する食品ロスの状況
環境省の調査によると、平成25(2013)年度の児童・生徒1人当たりの学校給食から発生する食品廃棄物の量は年間で約 17.2kgで、残食率を把握している約3割の市町村での残食率の平均値は6.9%というデータがあります。牛乳の廃棄量まで把握できている自治体は少ないようなので、実際はもう少し大きい数値ではないかと推測されます。
児童・生徒1人当たりの年間の食品廃棄物発生量(平成25年度推計)
※「残食率」とは、出席した人数分の学校給食の提供量に対する、食べられずに残された給食の量の割合を指します。
フードロスが引き起こす諸問題
食べ物を捨てることは、食べ物そのものだけではなく、それを生産するためにかかったコストや水などの資源・労力・そして命が無駄になってしまうということを意味します。
廃棄処理コスト
ごみ処理事業経費(一般廃棄物処理事業のうち、し尿処理事業経費を除く)は年間で約2兆円にものぼり、コンビニやスーパーの売れ残り、飲食店での食べ残しなどの事業系一般廃棄物は税金を使って処理されています。
食品廃棄物を減らすことで、ゴミ処理にかかるコストを削減できます。
環境への負担
食品廃棄物を処理するために燃料が使われるため、温暖化の原因にもなってしまいます。また、食品を生産・加工する過程で大量の水も使われています。
食品ロスを減らすことで、地球温暖化の防止や水資源の保護に繋がります。
飢餓問題
先進国で食品廃棄が問題になる一方で、世界では、およそ7億9,500万人(9人に1人)が、健康で活動的な生活を送るために必要かつ十分な食糧を得られていないと言われています。日本の食品ロス量は、国連世界食糧計画による食糧援助量(約320トン)の2倍です。
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食品リサイクル法により事業系フードロスは改善傾向に
環境省は2000年に食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律・食品リサイクル法を制定し、食品関連事業者(製造、流通、外食等)から排出される食品廃棄物の発生抑制や再生利用等を目指しています。
食品リサイクル法における再生利用は1,426万トンで、内訳は以下の通りです。
① 飼料化
エコフィード
食品残さ等を利用して飼料を製造します。
リキッドフィーディング
食品廃棄物を分解発酵させて液状にしたものを発酵飼料として豚に与える仕組み。
② 肥料化
有機性産業廃棄物を環境に害を及ぼすことなく、安全に土壌還元可能になるまで分解し、肥料として利用します。
③ メタン化
メタン発酵によりバイオガスを生成(メタン化)し、電気・熱にエネルギー利用する。メタン化では、特に肥料化や飼料化に向かない食品廃棄物を活用できます。
家庭から出される生ゴミの多くがリサイクルされていない
食品関連事業者から排出された食品廃棄物はリサイクルが進んでいますが、一般家庭から出される生ゴミのほとんどがリサイクルされずに焼却・埋め立て処分されているのが現状です。
食品廃棄を減らすための世界の取り組み事例
食品廃棄の問題は、日本だけでなく、先進国の多くで問題となっています。各国の取り組み事例を見てみましょう。
日本「3010(さんまるいちまる)運動」
“おうち”で「残さず食べよう!30・10(さんまる いちまる)運動」
家庭から出る生ごみのうち、約3割はまだ食べられるのに廃棄されています。また、食品ロスの約半分は一般家庭からのものです。
【毎月30日は、冷蔵庫クリーンアップデー】
冷蔵庫の賞味期限・消費期限の近いものや野菜・肉等の傷みやすいものを積極的に使用し、冷蔵庫の中をきれいにしましょう。
【毎月10日は、もったいないクッキングデー】
特に、今まで食べられるのに捨てられていた野菜の茎や皮等を活用した「野菜まるごとレシピ」や余りがちな食品をリメイクしていただく『もったいないクッキング』を実践しましょう。
“おうち”で「残さず食べよう!30・10(さんまる いちまる)運動」
飲食店から出される生ごみの、約56%はお客さんの食べ残した料理です。(平成30年度松本市一般廃棄物組成調査)会食、宴会時での食べ残しを減らすために、30・10運動を実践しましょう!
1.注文の際に適量を注文しましょう。
2.乾杯後30分間は席を立たず料理を楽しみましょう。お
3.お開き前10分間は自分の席に戻って、再度料理を楽しみましょう。
宴会時に約7皿に1皿相当が食べ残されている状況を受け、長野県松本市でスタートし、福井県、福岡県、静岡県などの自治体に広がっています。
参考:松本市 「残さず食べよう!30・10(さんまる いちまる)運動
日本「フードバンク活動」
フードバンクとは、「食料銀行」を意味する社会福祉活動です。
まだ食べられるのに、さまざまな理由で処分されてしまう食品を学校や職場などに持ち寄りそれらをまとめて地域の福祉団体や施設、フードバンクなどに寄付する活動で、約50年前にアメリカで始まり、日本でも広がりを見せ始めています。
長野県 認定特定非営利活動法人フードバンク信州
フードバンク信州は、食料資源を有効活用し食品ロスを削減しながら生活困窮者の方に必要な食料を届けすることで自立を支援する地域のネットワークづくりを進めています。
認定NPO法人フードバンク山梨
十分に安全に食べられるのに、箱が壊れたり、印字が薄くなったりして、販売できない食品を企業
から寄贈して もらい、必要としている施設や団体に無償で提供する活動を行っています。
埼玉県・特定非営利活動法人フードバンク埼玉
フードバンク埼玉では、包装の破損や印字ミス、賞味期限に近づいた等といった理由から、品質には問題がないにも関わらず廃棄されてしまう食品・食材を、企業や個人から引き取り、必要としている福祉施設・団体等や生活困窮者へ無償で提供する活動を行っています。
セカンドハーベスト名古屋
企業・個人から食品を引取り、必要とする団体や個人へ届ける2つの活動を行っています。
① 寄付された食品を、野宿生活者を支援する団体や母子生活支援施設、障害者支援施設等、各種福祉施設・団体へ配布する
② 寄付された食品を、突然のケガや病気により働けなくなった方や、地域で孤立し生活に困った個人へ、行政と連携して食品を届ける
アメリカ「doggy bag」
外食で食べきれなかった料理を持ち帰るシステム「doggy bag(ドギーバッグ)」がアメリカで普及しています。
日本では大津市がドギーバッグ使用を推奨していますが、料理の持ち帰りには食中毒のリスクなど、衛生面での問題が壁となり、まだまだ浸透しているとは言えない状況です。
デンマーク「賞味期限切れ食品の専用スーパー!?」
2016年2月22日、首都コペンハーゲンに賞味期限の切れた食品を専門に扱うスーパー「Wefood」がオープンしました。Wefoodで扱う商品は、賞味期限切れ(かつ消費期限内)、傷のある野菜や果物、包装に難のある商品などで、これらを通常の30~50%引きの価格で販売しています。
<参考リンク>
コペンハーゲン通信PART7
世界初!? 期限切れ食品を扱うデンマークのスーパーが話題に
日本でも、まだまだ食べられるのに捨てられてしまう、そんな「ワケあり食品」を扱うお店がオープンし始めています。
エコロマルシェ
エコロマルシェは、国内に溢れかえっている様々な理由のまだ食べられる「ワケあり食品」の廃棄処分を食い止め、少しでも多くの消費者に食べてもらうために再流通させ、食品ロス削減を目指すフードリカバリーショップです。
所在地
東京
eco eat(エコイート)
eco eatでは、食品衛生上問題の無い廃棄食品、廃棄予定の食品を販売または福祉施設や慈善団体、生活困窮者に直接支援することにより食品ロス低減を目指して活動しています。
所在地
東京・大阪・兵庫・高知
私たち一人ひとりができる食品ロス対策
食品廃棄物を減らすには、食べ残さないのはもちろん、無駄な食品を買わないことや、外食や総菜に頼りすぎずに食べ切れる分だけ手作りするなど、私たち消費者の心がけが大切です。日々できることはたくさんあります。
◆スーパーの売れ残りコーナーをチェックしよう
売れ残りコーナーには、野菜や果物、加工食品系など、まだ食べられるものが色々置かれています。野菜や果物は確かに新鮮なものの方が美味しいですが、料理の工夫で美味しくなります。
また、加工食品系であれば、賞味期限ギリギリでも問題ないものがほとんど。少しでも廃棄を減らすためにも是非チェックをしてみてください。
◆冷蔵庫を整理しよう
「前買ったのを忘れていてまた買ってしまった」なんて経験のある方もいるのではないでしょうか。そして前に買ったものはいつの間にか古くなって使えなくなってしまっていた、ということも。
そんなことが起こらないためにも、是非、こまめに冷蔵庫の整理を。探す手間が省け、ストレスがなくなる他、日頃の食事を見直す良い機会になるはずです。
◆調理の方法を工夫しよう
必要以上に皮をむいたり、食べられるところまで切り落としてしまったりということが多いようです。皮まで食べられるものはそのまま使うようにすれば調理も簡単。たくさん作ってしまった場合は、冷凍にして保存しておくと便利です。
◆レストランでは食べられる分だけ注文を
レストランで大量にお皿に残されたまま帰られる方を時々見かけますが、これは本当にもったいないこと。
自分が食べられる分だけ注文し、全て綺麗にしてから帰ることを心がけましょう。
食べられる分だけ、ということは子どもたちにも伝えていきましょう。自分で本当にどのぐらい食べられるのだろうと自分に意識を向けるきっかけにもなります。
◆流通の実態を子どもたちにも伝えよう
毎日私たちが食べているものが、食卓に並ぶまで、どのような経路をたどってくるのか、親子で考える時間を作ってみましょう。
こちらの『信じられない「原価」』シリーズは子どもにも分かりやすく書いてあるのでおススメです。
図書館にも置いてあることがありますので、是非チェックしてみてください。将来の仕事のあり方、生き方についても考えるきっかけにもなるのではないでしょうか。
◆アプリを使って廃棄される食品をレスキュー!『TABETE』
TABETEは廃棄の危機にある食事を手軽にレスキューできる、フードロス削減のためのWebプラットフォームです。
まだおいしく食べられるけれど、閉店時間や賞味期限などの理由からお店が捨てざるを得ない状況から、TABETEユーザーが食事を救い出すことができます。
タイミングによっては、大豆ミートを使った料理や和菓子など、菜食の方でも安心して食べられる食品に出会えることも・・・♪(3月16日にはヴィーガンタコライスのレスキュー待ちがありました。)
>>>TABETE公式サイトへ
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毎日の選択が子どもたちの未来に繋がっていきます。私たち一人ひとりにできることもたくさんあります。親子で日々の生活を見直しながら、廃棄削減に取り組んでいきましょう。
ヴィーガン子育て編集部
※現在、日本では「VEGAN」を「ヴィ―ガン」「ビーガン」の2通りで表記されていますが、意味は同じです。当サイトでは「ヴィ―ガン」で統一しています。