世界で最も消費されているパーム油が与える環境と動物への影響を知ろう
パーム油は、マーガリンやショートニング、加工食品、洗剤や化粧品など、私たちの身近にある様々な製品に使用されている植物油脂の一つです。
今回は、パーム油が野生動物や地球環境に与える影響や、油の消費量を減らす調理方法などをご紹介します。
Contents
パーム油とは?
パーム油とは、アブラヤシの実から採れる植物油のことです。2005年には大豆油を抜いて世界で最も消費されている植物油となりました。更に、2010年~2030年の20年間で、世界のパーム油の生産量が約3倍に増えることが見込まれています。(出典:一般社団法人日本植物油脂協会)
また、パーム油は食用油としてだけではなく、洗剤や化粧品などの原料として幅広く使われています。日本の油種別消費量を見てみると、1位:なたね油 2位:パーム油 3位:大豆油。この3種が消費量のほとんど占めています。
日本では、加工食品に使用される油脂の表示について、加工食品品質表示基準で以下のように定められており、具体的な油の種類を示さなくてよいとされています。
- 加工食品 品質表示基準
- 植物油:「植物脂」または「植物油脂」
動物油:「動物脂」若しくは「動物油脂」
加工油:「加工脂」若しくは「加工油脂」
加工食品の多くは「植物油」「植物油脂」のみの表記となっています。このことから、「植物油脂」と表記されている場合、なたね油・パーム油・大豆油が使われている場合が多いと考えて良いでしょう。
パーム油は食品から化粧品まで幅広く使われている
パーム油は、以下の名称でも表記されています。「グリセリン」や「界面活性剤」などの表示は化粧品やトイレタリー製品で目にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
- 植物油
- 植物油脂
- ショートニング
- マーガリン
- グリセリン
- 界面活性剤 など
出典:消費者庁 加工食品品質表示基準
パーム油が世界中で人気の理由
なぜ、パーム油が世界的に人気な油なのでしょうか?
パーム油には飽和脂肪酸であるパルミチン酸が多く含まれており、常温で固まる性質を持っているため、使い勝手の良さから多くの加工食品に使われています。また、他の植物油に比べ安価なのも人気の理由の一つです。
- パーム油が人気の理由
- 個体でも液体でも使える
安い
個体でも液体でも使えるパーム油の使用例
個体の例
チョコレート・・・カカオバターに比べ安価で、チョコレートに似た口溶けを出せる
液体の例
揚げ物・・・サクッとした食感に仕上がる
ポテトチップス・・・酸化しにくいので揚げ油として重宝されている
安さとおいしさの裏側にあるもの
世界的に需要の高まりが続くパーム油ですが、その裏側には様々な問題が潜んでいます。
WWFでは『パーム油の生産がもたらす7つの問題』として挙げています。
- 熱帯林への影響
- 泥炭地への影響
- 森林・泥炭火災の影響
- 野生動物への影響
- 人への影響
- 生産者が抱える問題
- パーム油を使わないことで生じる問題
7つの主要な問題のうち、いくつかを詳しく見てみましょう。
熱帯林への影響
パーム油の原料となるアブラヤシを栽培できるのは、日差しが強く、雨量の多い熱帯の国だけです。そのため、生産の約90%をインドネシア(約55%)・マレーシア(約32%)・タイ(3%)で担っています。
アブラヤシ農園開発の過程では、多くの熱帯雨林が大規模に伐採されており、インドネシアのスマトラ島を例に見てみると、30年前に比べて森は半分以下に減少、低地の森はほぼなくなっていることが分かります。
野生動物への影響
熱帯雨林には、オランウータン・ゾウやサイ・トラなど多種多様な野生生物が生息していますが、パーム油生産の拡大により住処や食べ物を失い、絶滅の危機に瀕しています。
また、オランウータンがアブラヤシ農園に出没し新芽を食べてしまい農家に害獣として扱われたり、アジアゾウなどの野生動物が、農園に踏み入り人と衝突する事故も頻繁に起きています。
人への影響
アブラヤシ農園の開発では、周囲の人々や森に暮す先住民が、開発を知らされずに住む場所を失うケースがあります。さらに、パーム油を生産するためのアブラヤシ農園で働く人たちに関わる児童労働や強制労働も問題になっています。
パーム油を使わないことで生じる問題
パーム油の代替植物油として、菜種や大豆などからパーム油に匹敵する量の油を採ろうとすると、現在のパーム農園よりも広い土地が必要になり、更なる森林破壊を引き起こす可能性があります。南米では、大豆プランテーション開発において、パーム油と同様の問題を抱えています。
※プランテーションとは、熱帯、亜熱帯地域の広大な農地に大量の資本を投入し、国際的に取引価値の高い単一作物を大量に栽培する大規模農園またはその手法のこと。
ご紹介したように、パーム油生産の裏側には実に沢山の問題があり、「パーム油を使わないようにしよう」となりがちです。しかしながら、加工食品やファストフードが生活に定着している現代では、パーム油をやめ代替の植物油を使うようにすることは、先述のように更なる環境悪化を招く恐れもあります。
私たちができるパーム油問題の解決方法
こうした中で、大きな変化をすぐにもたらすことは難しいかもしれませんが、①油自体の消費をできる限り抑える ②食品ロスを減らす ③認証付きのものを選ぶという一人ひとりの意識を変えていくことが、環境破壊を止める上でとても重要になってきます。
それでは、具体的にできることを見ていきましょう。
- 油自体の消費をできる限り抑えよう~調理方法の工夫~
- 食品ロスを減らそう
- 認証付きのものを選ぼう
油自体の消費をできる限り抑えよう~調理方法の工夫~
食材の量に合った鍋を使う
少人数分の揚げ物をする場合、大きなフライパンを使うとそれだけ使う油の量も増えてしまいます。そんな時は深めのミルクパンや片手鍋など、小さな鍋を使うのがおススメです。
揚げ焼きで油の消費量を減らそう
揚げ焼きとは、炒め物をするより少し多めの油で食材を焼くように揚げる調理法のことを言います。たっぷりの油を使わず、食材が浸るくらいを目安にして、ひっくり返しながら両面を焼きましょう。こうすることで、揚げ物に使う油の量をグッと減らせます。
ウォーターソテーで健康にもいい調理を
ウォーターソテーとは、食材を水で炒める調理方法のことを言います。炒めものを作るとき、油の代わりに少量の水を入れて調理します。油の消費量を減らせるだけでなく、ヘルシーで、食材本来の旨味を逃さず調理することができます。
油なしでは物足りない場合は、火を止めた後に少量の油で風味付けをするのがおススメです。こうすることで、油の消費量を抑えられるだけでなく、油の酸化も防ぐことができます。
食品ロスを減らそう
日常的にできることをこちらの記事でご紹介しています。親子で読みたいおすすめの本もありますので、ぜひご覧ください。
認証付きのものを選ぼう
パーム油の認証制度、RSPOマークの製品を探してみましょう。
『RSPO』は「持続可能なパーム油のための円卓会議 (Roundtable on Sustainable Palm Oil)」の略で、その目的は世界的に信頼される認証基準の策定とステークホルダー(関係者)の参加を通じ、持続可能なパーム油の生産と利用を促進することにあります。
RSPOでは、2種類の認証制度が設けられています。
- P&C認証
- 農園や搾油工場を対象に、持続可能な生産が行われているか、RSPOが定めた判断基準となる原則と基準(Principle & Criteria)に則っていることを認証する
- サプライチェーン認証(SCCS認証)
- 上記の認証制度によって生産されたパーム油を使用する製品を取り扱う、製造・加工・流通過程(サプライチェーン)を対象に、RSPOが定める要求事項を満たしていることを認証する
SCCS認証を取得した企業は、認証パーム油を原料として利用した商品にRSPOマークを使用することができ、日本でも、シャンプーや石けん、洗剤などのトイレタリー製品でRSPOマークのついた商品が販売されています。
認証基準にまだ課題があるとの批判はあるものの、こうした流れを通して、確実に流れは変わっていきます。
日頃から意識をして買い物をしよう
加工食品の品質表示基準では具体的な油の種類を示さなくてよいことから、食品表示からどんな油が使われているのか、見極めるのが難しいのが現状です。どんな油を使っているのかメーカーへ問い合わせてみるなど、日頃から意識して買い物をすることを心がけてみましょう。
一部のメーカーでは、環境や動物への影響を考え、パーム油を使用していないことを明記された商品も販売されています。是非、色々探してみてください!
パーム油不使用のおススメ商品
国産竹からうまれたやさしい洗剤 バンブークリア
バンブークリアは、「竹炭」「竹炭灰」「湧水」だけのシンプルな原材料でつくられた天然成分100%の無添加洗濯用洗剤です。原材料の元になる竹は、主に山口県内(周南市、防府市)にある放置竹林の環境整備を目的として計画的に伐採されたものを使用しています。
ヴィーガン子育てセレクトショップにて、お買い求めいただけます。
一人ひとりの意識の変革なくして環境は守れません。できることはたくさんあります。日々の生活、見直してみませんか?
ヴィーガン子育て編集部