学校での動物飼育(アンケート結果)〜環境整備、教師の負担など課題は山積み〜
ヴィ―ガン子育てプロジェクトでは、2018年9月に、学校での動物飼育についてアンケート調査を実施しました。アンケートを通して、現在の動物飼育環境の状況、教師の負担、子どもたちの様子なども見えてきました。
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「学校での動物飼育~命の尊さ、学べていますか?~」アンケート結果
2018年8月31日から9月30日まで実施したアンケート(有効回答数58票)の結果は下記のとおりです。
- 「学校での動物飼育は必要ですか?」アンケート結果
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有効回答数58票のうち
「必要でない」 47票
「必要」 4票
「どちらともいえない」 7票
残念ながら、「必要」と回答いただいた方からその理由に関するコメントはありませんでした。
一方、「必要でない」とご回答いただいた方の理由については、ほとんどの方が、劣悪な環境、適正な飼育がされていない、教師の知識不足、情操教育に繋がっていない、ということを挙げられていました。
思いの込められたコメントをたくさんいただきました。改めて、アンケートにご協力いただいた皆様には心より感謝申し上げます。全てご紹介したいところですが、いただいたコメントの一部を以下にご紹介させていただきます。
学校での動物飼育は必要ない意見
☆教員が世話を怠り子ども任せにしているので情操教育などと呼べるものではありません。
そもそも教員が飼育動物に対して無知なので子どもに何を聞かれても答えることができていません。
☆動物と触合うことは大切なことだと思いますが、学校で月に何回かお世話の当番がまわってくる程度のふれあいに、動物の命の大切さがどこまで伝わるか疑問
☆長年、掃除が行き届かず糞尿が積み重なり、コンクリートの床は土と化し、掘るとBB弾が沢山出てきた。これは大人の目が届かないがゆえに動物がエアーガンの的にされた証拠。
☆真夏35℃にもなるコンクリート床の小屋で飼育されている
☆動物の身になって考えてみるという共感を学ぶ機会を奪っている
☆予算が少ない公立校では飼育すべきではない。少なくとも飼育ハードルが高いアナウサギは学校では健康安全に飼育できない。
☆どんどん近親交配して増え、病気の子は病院へ連れて行ってもらえなかった
☆亡くなっても新しい子がすぐ来るようでは、命の尊さを学ぶというよりは、いくらでも代わりがいるような感覚になるのではないかと思う
☆休みの日は家庭も仕事もある先生の誰かが、学校動物の面倒を見に出勤しなければいけない。生徒の教育のため、という大義名分があるにもかかわらず、生徒が主体となって飼育することは不可能
☆被災した時は一番後回しにされる
学校での動物飼育は必要・不必要のどちらとも言えない意見
☆学校での飼育に限らず、家庭でペットとして飼育するにも同じことが言えますが、飼育するのであれば、それにどう関わるかが重要であると思います。つまり、成長過程の小さな子ども達に対しては、その周囲の大人(学校の職員や親など)がどういう関わりを積極的に作ってあげるかが重要ではないかと思います。
☆自分が子どもの頃、家にも学校にも居場所がなく、飼育小屋でチャボのお世話をする時だけが救いの時間だったこと、よく飼育小屋にしゃがみこんでチャボに話を聞いてもらっていたことを思い出すと、もし私のような子どもがいて学校飼育動物がその子にとっての救いになる可能性もあることも考えてしまう。でも、人間の癒しのために動物が犠牲になって良いはずはなく、私の唯一の友達だったチャボが私が転校した後どうなったかを考えても、学校飼育動物はやめるべき、もしくは命の学習というのならば、本当にきちんと動物福祉や倫理を教師も生徒も学び、せめて5Rに則って生涯お世話するべき。
☆子どもにとって動物がいる環境は精神的によい影響はあると思います。
お友達と喧嘩をしちゃったようなときに学校の中庭にいるニワトリに雑草を与えたりしてクールダウンしてまた皆のところに戻ったり・・なかなかお友達とうまく関われない子の昼休みの逃げ場にもなりますので。
学校のニワトリが卵を産んで、それを先生が理科室のふ卵器に入れてヒヨコになるのを楽しみに待つわくわくする幸せな気持ちも、大切な子ども時代の思い出になると思います。
けれど今は昔より先生方の負担も多いですし、飼育環境のことも考えれば動物に対する責任ということもありますので、なんともいえないです。
とはいえ、あまりそれを突き詰めると、子どもはますます逃げ場を失うなあ・・というせつない気持ちにもなります。
☆動物も人間と同じ大切な命であり、1匹1匹性格もそれぞれあり、感情があることを学ぶためには小学校などで動物を飼育するのは大切だと思います!ただし、ただ世話を任せるのではなく、きちんと関わり方を同時に説明する必要があると思います。
☆もし、愛情を持って動物を飼うことで、動物の肉なんて食べれないよね、という教育に繋げるのであれば、飼うことは賛成です。ペットは可愛い、家畜は別、そんな観念を養う様なら、動物の飼育は反対です。
理想と現実・・・動物飼育の教育目的はいのちの教育が一位だけれど・・・
公益財団法人山梨総合研究所の調査(https://www.yafo.or.jp/2016/07/29/5727/)によると、動物を飼育する理由について(複数回答)は、「以前から飼われているから」が82校(78.8%)を占めています。その他、情操教育の一環としてが66校(63.5%)、教材としてが47校(45.2%)となっています。
また、動物を飼育する教育目的について(複数回答)は、いのちの教育が最も多く154校(85.6%)、愛情飼育(人と動物が親しみ合う、情をかわすことから得られる効果)が153校(85.0%)、理科飼育(理科過程に組み込まれているもの)が54校(30.0%)となっています。
一方、学校現場で動物を飼育する上で最も大きな課題(単一回答)は、「飼育する人(教師)の負担を軽減すること」が最も多く、32校(32.8%)を占め、次いで、飼育場所の確保が14校(13.5%)、飼育方法の理解が13校(12.5%)となっています。
動物と触れ合うことで、命の尊さを学んでほしい、というのは、非常に分かりやすい理由です。ですが、学校現場では、先生方が飼育について学び、子どもたちに話をする、飼育環境を見直す、といった余裕がほとんどないということが以上の調査からも分かります。
学校飼育を推進する日本獣医師会が感じる課題
動物飼育に関しては、獣医師会が積極的に推進しています。
こちらの第5回学校動物飼育支援対策検討委員会公開型拡大会議(意見交換会)の会議概要(http://nichiju.lin.gr.jp/conference/shodoubutu_school_small/270215.pdf)にも、“日本獣医師会は、児童の情操教育等における学校動物飼育の果たす役割の重要性に着目し、平成15年に学校飼育動物委員会を設置し、本格的な検討を行うとともに、様々な提言を行ってきている”と記載してされています。
また、日本獣医師会は「がっこう動物新聞」を発行することによって、“子どもたちの動物への関心が高まり、動物とのふれあいによって、心の成長に寄与することができればと期待”し、活動をされています。
ただ、動物とのふれあいを通して心を成長させるには、適した環境で、正しい知識を伝えていくことが必要ですが、会議概要に記載されている以下の意見からも、その辺りの対応が遅れている様子が伺えます。
“全国的に、飼育小屋や飼育数は減っている。大きな小屋に1匹だけいて、1匹が死ぬと次は飼わずに終わりというところも多い。そういう学校が、何故動物を飼っていたかというと、今まで飼っていたからで、子どもたちに何をしてあげたいかという自発的なものがない。学校から動物がいなくなって、ゼロから学校に考えてもらうことも必要である。屋内飼育の方が教育的効果が高いとも言われる中、飼育小屋に固執せず、違う方法を取るのも一考である。”
獣医師会側としても、学校現場へどう働きかけるかは大きな課題となっています。
現状の学校飼育の環境で、命の大切さを子どもたちが感じるところまで到達しきれていない、ということは先述のアンケートからも分かります。また、学校側の負担も大きな課題となっています。子どもたちが命と向き合い、その尊さを感じるために、どのような働きかけが可能でしょうか。
次の回では、保護猫を学校で育て、譲渡まで責任を持って活動をされている立花高等学校の「命のつなぎ方」の活動についてお伝えしたいと思います。これからの学校での動物飼育について何か参考になることがあるのではないでしょうか。
ヴィーガン子育て編集部
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※現在、日本では「VEGAN」を「ヴィ―ガン」「ビーガン」の2通りで表記されていますが、意味は同じです。当サイトでは「ヴィ―ガン」で統一しています。