肉食文化の国ドイツで増加するヴィーガン人口~ヴィーガン商品には分かりやすい『Vegan』表示も~
こんにちは!ドイツ在住のwakaです。今回は、ヴィーガン食材の多いベルリンの現場から、スーパーで売られているヴィーガン食品や最近の動向についてお届けしたいと思います。
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ヒーリングサロンが多く並ぶベルリンの住宅街
住宅街を歩いていると、ヒーリングサロンを数多くみかけます。石造りの古いマンションの入り口にサロンの広告とともに仏像が展示してあったり、オステオパシーやタッチセラピー、ヨガ教室の看板も目にします。まさに、百花繚乱の様相です。
日本でも、こうしたサロン通いをされる方は、健康の増進を願って、あるいは霊的成長のため、もしくは運勢を改善したいなど、さまざまな理由で菜食をされる方が多いものです。ですので、こうしたサロンの多いベルリンに、ヴィーガンが多いというのは頷けます。
肉食文化の国で広がるヴィーガン食材
ところで、ドイツはもともと肉食文化の国です。農耕もしますが、秋の終わりに家畜の豚をお肉にし、ソーセージやベーコンなどの保存食を作って長い寒い冬を乗り切るという食文化がある国です。この点、日本とは大きく異なります。
日本産まれ日本育ちのわたしの祖母は95歳で健在ですが、ほとんどお肉を食べません。内陸の出身なので、子ども時代は魚もあまり口にしなかったようです。お肉については、当時の田舎でわざわざお肉を買って食べるのは金持ちの物好きが多かったとのことで、そうした人がお肉を買って七輪で焼くときに赤い肉汁の滴る様子を子ども心に怖いと思ったらしく、未だにお肉は苦手のようです。
そんな祖母の好きな食べ物は、茄子の辛子漬けと白ご飯。そして、黒砂糖に焼酎をかけたものが大好物。こうした祖母の食生活は無意識かつ自然に菜食主義者のそれと重なります。このような食文化を持つ日本でヴィーガンを実践するのは、メニューの選択という面からは比較的容易で、ご先祖が口にしたような食品を食べるだけで済みます。
ですが、ドイツでは先祖代々肉食をしているのが普通ですから、いざベジタリアン、ヴィーガンになると、何を食べるかが問題になります。ですが、昨今のベジタリアン・ヴィーガン人口の増加に伴い、ドイツではベジタリアン・ヴィーガン食品が非常に多く売られるようになりました。スーパーにはお肉を模した食品が多く、ソーセージにサラミ、揚げ物、ハンバーガー専用の具材に至るまで、その種類もさまざまです。
値段は上の写真のソーセージが1.99€(約260円)、サラミが0.99€(約130円)で、普通の肉製品と比べると若干割高ではあります。しかし、見た目も味付けも本物のソーセージやサラミのようで、とても美味しくできています。
また、ドイツでは夕食は調理せず、すぐ食べられる食品をいただくという文化ですから、買って調理せずに食べられるメニューが求められることにもなり、お惣菜やサラダや缶入りスープ、ランチパックなどのヴィーガンメニューも充実しています。
写真のスープはスーパーで1缶0.99€(約130円)で購入したもので、温めればすぐに食べることができます。ラザニアは1.7€(約220円)で、パックを開けてオーブンで焼くだけになっています。
また、牛乳を多用する文化でもあることから、牛乳の代用食品も充実しています。豆乳やライスミルク、アーモンドミルクが日本と比べるとかなり安い値段で入手できます。写真はディンケルとカラスムギのミルクです。それぞれ値段は1本1.7€(約220円)。豆乳やライスミルクも、スーパーで1Lあたり1€(130円)前後で購入することができます。豆乳から作られたアイスクリームやチーズもあります。
味付けは濃いめ!健康は二の次?!
ヴィーガンを実践する動機はさまざまで、日本では健康を理由とする方が少なくありません。そのようなこともあってか、日本の自然食品店で販売されているヴィーガン食品は、滋味深い、穏やかな味付けの食品が多いように思います。
これに対してドイツのヴィーガン食品は、日本と比べると全体的に濃いめの味付けです。アイスクリームやお菓子は特に、食べた瞬間、これは健康を志向する人の食べるものではない!と感じる甘さです。とりわけお砂糖に関しては、あまり気にせずたくさん使っているな・・という印象です。
写真のお菓子はBIOでもあるので子どもによいと思って購入しましたが、それでも我が家の子どもたちは甘すぎると言ってあまり食べませんでした。1.5€(約195円)でした。
さらに、ドイツで健康志向の方に人気のあるのが、日本でいう有機無農薬栽培であるBIO食品ですが、ヴィーガン食品は必ずしもBIOではなく、BIOでかつヴィーガンとなると選択肢は狭まることになります。(とくにお惣菜系の食品の選択肢がなくなります。)
このことから、ドイツのヴィーガンの多くは健康は二の次で、地球環境への配慮などの倫理的理由か、もしくは宗教上の理由からこのような食生活を選ばれているのだろうと感じます。
分かりやすい『ヴィーガン』表示
このことは、ヴィーガン食品の表示からもわかります。ヴィーガン食品の表示は、リンゴジュースやパンなどのような植物性素材の食品にもつけられています。
写真のジュースは100パーセントのリンゴジュースですが、ヴィーガンの表示がついています。それだけ、確実に完璧に菜食を実践したい方が多くおられるのでしょう。健康維持だけが目的であれば卵や蜂蜜などが多少混入していても許容できますが、宗教上、思想上の理由から菜食を行う場合にはそうではないからです(ドイツでは、特に野菜ジュースなどに蜂蜜が入っていることがあります。)
増加するイスラム系移民の方にも安心なヴィーガン食材
不安定な中東情勢を受けてベルリンでもイスラム系の移民の方が急増しており、新しいモスクの建設も進められています。
ヴィーガン食品は、このようなイスラム教徒の方が普通のスーパーで安心して購入できる商品の一つにもなっているのではないかと思います。イスラム教の教義では豚肉を食べることが禁止されていますが、とくに加工食品の場合、ある食品に豚肉(およびその他の宗教上禁止される肉類)が使われていないかどうかは、はっきりしないことが多いです。ですので、ヴィーガンの表示がされていればひとまず安心できる、という方は多いのではないかと思います。
個人を尊重するドイツではヴィーガンライフを実践しやすい
ベルリンのスーパーのヴィーガン食品のコーナーは品ぞろえ豊富で、しかも日々充実する傾向にあります。スーパーには、ヴィーガンに特に不足しがちなビタミンであるB12のサプリメントまで置かれています。
しかし、人々のヴィーガンに対する反応は必ずしも肯定的というわけではなく、特に親が子どもにお肉を食べさせないことについては否定的な方もいます。とはいえ、日本と比べるとはるかに多くの方がヴィーガンを実践していることもあり、それが許容されないということはなく、むしろ日本ほど同調圧力の高くないドイツにおいてヴィーガンを実践するのは比較的容易だろうと思います。
日本では、おせっかいな周囲から“なぜお肉を食べないのか?”“何か宗教をはじめたのか?”と詰め寄られることも多く、以前わたしが実践していたようなゆるやかな菜食生活ですら、それを続けるのはなかなか困難でした。
とりわけ宗教に不寛容な日本の社会では、何かあやしい宗教にはまっているのではないかという視線を向けられることになりがちです。また、会社勤めをしているような場合、職場の皆と一緒にお昼ご飯に出かけない、宴会でお肉に一切手をつけないということを続ければ、大変な社会的圧力を受けることになり、大きなストレスになります。
また、子どもの学校給食についても、断ろうとすると診断書を要求されることがありますので、協力的なお医者さんをみつけておく必要もあります。ですが、ドイツの社会は個人を尊重する社会です。しかも、ドイツ人は日本人に比べてはるかに他人の宗教や思想信条を尊重します。最近はイスラム系移民も増えていますから、お互いの宗教や思想・信条の違いを認め合わないとやっていけないという事情もあるでしょう。
ドイツはスピリチュアル文化の源流の一つであり、そうした方たちがヴィーガンを志向されることから、ヴィーガン自体、日本ほど少数派ではありません。このため、これまで見てきたように、普通のスーパーにも数多くのヴィーガン食品が販売されており、しかも、これらは日本に比べてはるかに安価です。こうしたマーケットの動きを見ていると、「ヴィーガン」というライフスタイルがどんどん広がっているということを強く感じます。今後も、ドイツの最新事情をお届けしていきたいと思います。
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不惑と言われる年齢ながら、未だわくわく(惑惑)のとまらない40歳。ベルリン在住。
ロスジェネ世代で、20代のころ就職活動中に発症したパニック障害を、ありとあらゆる健康法を実践して克服した経験あり。自分自身や子どもの健康のことなど、さまざまな面で閉塞状況に陥っていたことから、英語も話せない(ドイツ語はもちろん理解できない)にも関わらず、度胸だけで、2018年5月に渡独。
現在、ベルリンでカメラの修行中
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※上記2点は姉妹サイトThe World’s Mother Salonより