有機給食への道 Vol.1~そもそも有機栽培とは?~

子どもたちには農薬や遺伝子組換えなどの心配がない「安心・安全なものを食べさせたい」という想いから、近年は学校や保育園などの給食に対して「オーガニック給食」を求める声が増えてきました。

ですが、給食を有機食材にすることは、学校の判断だけでできることではありません。教育関係者だけでなく、栄養士や給食調理員、生産者、PTA、地方自治体など多様な関係者の意識の変革なく、変えることはできないというのが現状です。ヴィーガン子育てプロジェクトは、これまで学校給食について特集を組んできましたが、今回から「有機給食への道」と題して、様々な角度で「有機」に関する情報をお伝えしていきたいと思います。

有機給食への道シリーズ(随時公開中!)
Vol.1:~そもそも有機栽培とは?~
Vol.2:世界の有機農業の現状とこれからの有機農業を支える「参加型認証制度」
Vol.3-Ⅰ:子どもたちの五感を育み生きる力を育てる~長野市上高田保育園
Vol.3-Ⅱ:子どもたちの五感を育み生きる力を育てる~長野市上高田保育園

第1回は、そもそも有機栽培とは?ということを改めて考えていきたいと思います。

農産物の栽培方法の違いは?~慣行栽培・特別栽培・有機栽培~

農産物の栽培方法は様々ですが、日本では大きく①慣行栽培➁特別栽培③有機栽培に分けられます。それぞれの栽培方法や特徴は以下の通りです。

  1. 慣行栽培
  2. 一般に広く普及している農薬や化学肥料を使った農法です。国内に流通する農産物のほとんどを占めています。
      
  3. 特別栽培
  4. 慣行栽培に比べ農薬の使用回数(使用量ではありません)を半分以下にするなどの農法です。「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」で、「その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培」と定められています。

  5. 有機栽培
  6. 「有機農業の推進に関する法律」では、有機農業を「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう」と定義されています。

    なお、有機農業であっても「有機農産物JAS規格別表等への適合性評価済み資材リスト」に掲載された農薬や肥料は使うことが認められています。

詳しくは、有機JAS資材評価協議会のHPを参照
出典:農林水産省【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~

有機農産物の表示には「認証」が必要

有機栽培した農産物に「有機」や「オーガニック」と表示するためには、第三者機関の検査を受け「有機農産物の日本農林規格」の基準に適合した生産が行われていることの「認証」を得なければなりません。この有機JAS認証を取得してはじめて、「有機JASマーク」を表示することができます。認証を受けていない農産物は「有機」や 「オーガニック」などの表示を行うことができません。

また、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」では、「天然栽培」や「自然栽培」などの特別栽培農産物の表示と紛らわしい用語をはじめ、「無農薬栽培農産物」、「無化学肥料栽培農産物」、「減農薬栽培農産物」、「減化学肥料栽培農産物」なども表示禁止事項としています。

有機農業のメリットとデメリット

有機給食 ヴィーガン子育て

これが全てではありませんが、一般的に挙げられるメリットとデメリットについてお伝えします。

【メリット】

◎環境や生態系への影響が少ない

農薬や化学肥料が及ぼす環境や生態系、動植物への影響は、常に問題になるところです。国内外で報告のあるミツバチの大量死は、ネオニコチノイド系農薬が原因とも言われており、欧州では2018年4月にネオニコチノイド系のイミダクロプリド、クロチアニジン及びチアメトキサムについて屋外での使用を禁止しました。また、国内では、農薬の空中散布をめぐる問題や化学物質過敏症などを引き起こす健康被害が問題になっています。

◎遺伝子組換えを使わない安心

有機農業は、遺伝子組換え技術の利用を禁じていますが、世界ではトウモロコシ・ダイズ・ワタ・ナタネを中心に遺伝子組換え作物の栽培面積が年々増加しています。遺伝子組換え技術は生産性の向上や食品の機能性を高めるなどと言われる一方で、在来品種や生物多様性への影響、摂取した場合の人体への影響などが懸念されています。

遺伝子組換え技術とは?

生物の細胞から特異な性質を持つ遺伝子を取り出し、他生物の遺伝子に組み込んで新しい性質をもたせる技術です。世界で有名な遺伝子組換え作物と言えば、「ラウンドアップ・レディ」と呼ばれる、どんな植物も枯らす性質を持つ除草剤「ラウンドアップ」をかけても、枯れない耐性をもたせた作物ではないでしょうか。

◎ビタミンやミネラルが豊か

農薬で殺菌・消毒・除草・防病・治病し、与えた化学肥料で生育をコントロールするような化学的な農業は、自然の循環を断ち切ってしまいます。太陽のエネルギーを植物が吸収して作り出した養分を微生物に分け与え、微生物が作り出した養分が植物を守り育てるといった自然の循環による恵みが、人間の生存に欠かせないビタミンやミネラルにつながっています。また、自然の循環によって植物が自らを守るために作り出す「ファイトケミカル」の抗酸化力が近年注目されています。

【デメリット】

手間やコストがかかる

農薬や化学肥料は、農作業の効率を高めるために使われています。大規模な単一栽培も農薬と化学肥料があって可能になりました。それらを使わない有機農業では、防草対策などに手間がかかるのは当然です。植物は自然の影響を敏感に受けとめ、生長が等しくなったり、品質や大きさが均一になることもありません。また、使用が認められている有機肥料は化学肥料に比べて価格が高く、資材コストがかかります。

認証の取得が大きな負担

有機JASマークは消費者が選ぶ際の目安になりますが、認証の取得と継続のためには、初年度に認定申請料と検査料、2年目以降に確認申請料と確認調査料、プラス検査員交通費などの費用が必要なうえ申請書類も煩雑で、個人の農業者にとって大きな負担になっています。そのため、有機栽培はしていても、認証は取得していないという方も多くいます。

未熟な堆肥の危険性

肥料は植物生育のために必要な栄養分で、窒素・リン酸・カリウムが3大要素と言われています。有機農業では化学肥料を使わない代わりに、枯れ草や米ぬかなど植物性の有機物を発酵させた「植物性堆肥」や、牛や豚など家畜の糞を発酵させた「動物性堆肥」が使われることがあります。

「有機野菜=安心・安全」というイメージを持つ方も多いと思いますが、動物性堆肥の中でも特に多く使われているのが牛糞です。日本で飼育されているほとんどの牛がトウモロコシなどの穀物主体の濃厚飼料を与えられていますが、それらのほとんどは海外からの輸入に頼っており、ポストハーベスト(収穫後に散布される農薬)や遺伝子組換えの心配があります。

また、堆肥の原料となる家畜の糞にはサルモネラ菌や病原性大腸菌O157などが含まれていることがあります。堆肥の温度が上がらなかったり発酵期間が短いなど、十分に熟成しなかった場合、病原菌が残ることがあり、食中毒を引き起こす危険性も指摘されています。

さらに未熟な堆肥や化学肥料に含まれる硝酸態窒素は、人体に入ると有害な亜硝酸窒素に変わり、ブルーベビー症候群やがん、糖尿病などを誘発すると言われています。

「有機給食への道」の第1回目は、栽培方法の違いなどをお伝えしました。次回は、世界の有機食品の動向などを見てみたいと思います。

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ヴィーガン子育て編集部

監修:ソーシャルライター 吉田 百助
「国民の食料にもう国は責任を持たない」とでも言うように主要農産物種子法を廃止した国の農政を憂い、農林水産省関東農政局を早期退職。社会の課題を解説するソーシャルライターとして執筆とボランティア活動を行う。信州オーガニック議員連盟、NAGANO農と食の会などで、子どもたちの未来のために取り組んでいる。

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