動物園・水族館が抱える問題とは?グルグル動いている理由はストレスによる異常行動の可能性も
動物の姿を間近で見られる動物園や水族館に、みなさんも一度は訪れたことがあるのではないでしょうか。
日本には多くの施設が存在しますが、時代の変化と共に様々な問題を抱えるようになりました。
この記事では、日本の動物園・水族館の現状と問題点についてまとめてみました。
さらに、動物園・水族館に行かなくても、よりリアルに動物たちの実態が分かるおすすめのツールも合わせてご紹介していきます。
Contents
動物園や水族館が必要とされている理由
日本には、日本動物園水族館協会に加盟する施設だけでも91の動物園と52の水族館があり、水族館は世界で最も多いとも言われています。(2020年現在)
そんな世界有数の動物園・水族館大国の日本ですが、動物園や水族館は何のためにあるのでしょうか?日本動物園水族館協会では、以下の4つの役割を掲げています。
- 種の保存
- 教育・環境教育
- 調査・研究
- レクリエーション
出典:日本動物園水族館協会 加盟店検索
出典:公益社団法人 日本動物園水族館協会(公社)日本動物園水族館協会の4つの役割
グルグル回っているライオン、柵を舐め続けるキリン
ご紹介した4つの役割では、「動物の生態を理解してもらい、環境教育にも結びつけたい」「生き物たちが快適に暮らせるように気を配っている」としています。
しかしながら、動物園や水族館で飼育されている姿から、本来の生態を学ぶことはできるのでしょうか?そして、動物にとってその環境は快適なものと言えるでしょうか?
日本の動物園や水族館の飼育環境は、「アニマルウェルフェア(動物福祉)・アニマルライツ(動物の権利)への取り組みが不十分だ」と、欧米ほか海外から批判を受けることも少なくありません。
札幌市の円山動物園では、ホッキョクグマの飼育施設の広さが欧米のガイドラインの半分ほどしかないという理由で、繁殖のためのクマの提供を拒否されるというケースもありました。(その後改修され、2018年3月13日にオープンしました。)
みなさんは、動物園や水族館で、こんな光景を目にしたことはありませんか?
- グルグルと同じ場所を回っているライオン
- 柵を舐め続けているキリン
- 首を上下に振り続けているホッキョクグマ
これらの行動は、常同行動(じょうどうこうどう)やzoochosis(監禁状態に置かれた動物の異常行為)と呼ばれ、飼育下に置かれた動物が不自然なストレスや欲求不満を強いられている時に起こす異常行動とされています。
出典:Born Free Foundation
出典:NHKニュースおはよう日本
動物本来の生態と園内の飼育環境を比較
動物園でも人気のゾウを例に挙げてみましょう。
象は大人になると1日200~300kgもの草や木を食べ、100L以上の水を飲みます。さらに、水や食糧を求め広範囲を移動し、火照った体を冷やすために水浴びもします。
また、最年長のメスをリーダーとした10頭ほどの群れで生活をしていて、オスはメスの発情時期だけ群れに合流し、それ以外は年長のオスは単独で暮らし、若いオスはオスだけの群れで暮らします。
一方、動物園で飼育されているゾウはどうでしょうか?
東京都武蔵野市にある井の頭自然文化園で飼育されていたアジアゾウの「はな子」は、60年以上もの間、狭いコンクリート製のゾウ舎で単独飼育され、孤独に過ごしました。
その姿を見たカナダ人女性が、飼育環境の改善を求める署名をはじめたことをきっかけに海外メディアでも大きく取り上げられ、「世界一悲しいゾウ」として有名になりました。30万件以上もの署名が集まり、動物擁護家たちが「はな子」をゾウのサンクチュアリーに移すよう求めました。しかし、その願いは叶うことなく、「はな子」は2016年5月26日に69歳で亡くなりました。
他にも、栃木県宇都宮市にある私立宇都宮動物園では、アジアゾウの「宮子」が45年にわたり単独飼育・展示されています。「宮子」は国際的にも類を見ないほど狭く、土や草木もないコンクリート製のゾウ舎で飼育されています。
日本の動物園では、「宮子」だけでなく、単独飼育されているゾウが11頭もいるのです。(2019年時点)
出典:NPO法人 動物解放団体リブ 46年間監禁されているゾウ 宮子
華やかなイルカショーの陰で苦しむイルカやシャチたち
本来の生態とは異なる環境で暮らしている動物は他にもたくさん存在しています。子どもも大人も大好きなイルカやシャチ。アクロバティックなショーはいつも観客で埋め尽くされています。
ですが、あのようなショーを演出するために、彼らは非常に過酷な生活を強いられています。そのストレスにより異常行動を起こすことがあります。例えば、繰り返しグルグルと同じところを泳いだり、バーを噛むことにより歯を傷めたり、自らの体をコンクリート壁の側面に打ち付けるといった様子などが見受けられます。
出典:NPO法人 動物開放団体リブ イルカ・シャチの異常行動
多額の運営費の赤字が税金で補填
動物園・水族館の抱える問題は飼育環境だけではありません。運営に多額のコストがかかるという問題もあるのです。葛西臨海水族園を例に見てみると、年間の運営コストは11億円にものぼります。
現在、レジャーの多様化や少子化による入園者数の減少、施設の老朽化などにより赤字経営に陥っている施設も少なくありません。にもかかわらず、行政の運営する公立動物園・公立水族館は、民間の施設に比べ入園料も1,000円以下と低価格に設定されています。それはなぜでしょうか。
公立
葛西臨海水族園 | 700円 |
私立
すみだ水族館 | 2,050円 |
サンシャイン水族館 | 2,200円 |
しながわ水族館 | 1,350円 |
民間の運営する私立動物園や水族館は、運営にかかる費用に加え利益を上げる必要がありますが、公立動物園や水族館は地方公共団体の財源によって運営が行われているため、入園料を安く設定することができるのです。大阪府にある天王寺動物園の公費負担率は54%で約半分を税金で補填していることになります。(平成27年度実績)
水族館の2020年問題
それだけでなく、水族館は30年に一度の大規模な改修工事が必要とされています。日本の水族館の多くは1990年代に開業しており、改修期を迎える2020年前後に必要な施設の修繕や建て替え費用が大きな問題となっています。
東京都の運営する葛西臨海水族園は、老朽化や社会背景の変化に伴う建て替え事業計画を発表しています。2026年度の開園を目指し、施設の整備費は244億~276億円と想定されています。
出典:東京都建設局 葛西臨海水族園の更新に向けた事業計画(素案)
税金が投入されている公立動物園や水族館に対し、民間が運営する施設では閉園を余儀なくされるケースも少なくありません。千葉県銚子市の水族館・犬吠埼マリンパークは、施設の老朽化や来館者の減少により経営破綻し、2018年1月31日閉園しました。
そこで飼育されていたイルカの「ハニー」は、閉園後も汚れた水槽の中に取り残され、ひとりぼっちで泳ぐ姿がメディアでも取り上げられました。
動物愛護団体のPEACEがマリンパークと市に「ハニーを助けて!」とアクションを続けてきましたが、2020年3月29日に死亡していたことが分かりました。
出典:PEACE 水族館
こちらはNPO法人動物解放団体リブが撮影したハニーの最後の姿です。背中の皮膚は何か所もめぐりあがり、皮膚も口周りもひどい状況に見えます。
ご紹介したように、動物園や水族館は動物にとって快適ではない不自然な環境というだけでなく、多額な運営費や修繕費の問題も見逃せません。
超高齢化社会を迎えると言われている日本では、医療費や年金などの社会保障制度の崩壊が叫ばれています。そのような状況下の今、税金によって運営されている動物園や水族館の在り方を考え直さなければいけない時期に来ていると言えます。
それだけではなく、今後もマリンパークのように経営破綻する施設が増えれば、飼育されていた動物たちが行き場を失う恐れもあります。
行き場を失った動物たちは、劣悪環境の中で生きていくか、もしくは他の施設に移され、そこで同じ生活を強いられることになります。いずれにしても、動物たちにとっては「自由」とは程遠い生活が続くのです。
動物たちのために私達ができること
動物園・水族館の多くが開園した1990年代と現代を比べてみると、映像技術や通信技術の発達により家に居ながら様々な情報を得たり、世界中の景色を楽しむことができるようになりました。
動物園や水族館へ行くのではなく、図鑑を使って動物の生態を調べたり、Google mapやGoogle Earthのストリートビューを使って、世界中の動物を見ることもできます。
ぜひ、お子さんと一緒に、オンラインで野生生物保護区を探索したり、海中へ潜って海の生物を観察してみてはいかがでしょうか。
アフリカの野生動物
南アフリカ、ケニア、コンゴ民主共和国の 11ヵ所に設置されたライブカメラで、アフリカ大陸の野生動物の姿を間近で観察できます。
サメの大群に出会おう!
ストリートビューを使って世界中の海にいるサメの姿を見ることができます。
>>>ストリートビューでサメを探す Google Earth
ケニア・サンブル国立保護区
「保護団体と共にゾウの生息地を探る」をテーマに掲げ、ゾウの保護団体であるSave the Elephantsやサンブル郡政府の協力を得て撮影したケニア初のストリートビュー画像では、アフリカの雄大な景色だけでなく、野生のゾウやシマウマの姿が楽しめます。
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動物園や水族館の動物たち、実験に使われている動物たちの声が聞こえてきます。英語の本ですが、かわいらしいイラストで子どもも読みやすい内容です。
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